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登山とダイエット
丹沢でテントを背負って主稜縦走と呼ばれる山行をしたことがあります。いや丹沢は確かテント禁止のはずです。幕営はしていないと言わなければなりません。本当はあれですが、ここでは言えません。

とにかくどこかで一泊して、二日目には蛭ヶ岳を登りました。蛭ヶ岳を越えると急激に下り、最後の檜洞丸への登りにさしかかったところ、途中で疲れてもう体が上がらなくなりました。足の力だけでは無理で、周りの木を手でつかんで腕の力も使ってはい上げります。次第にそれも無理になって、斜面にへたり込んでしまいました。
しばらくダウンしていると、下からひょいひょいと登ってくる人がいて、座り込んでいる私の横を追いぬいていきました。その方が背中に背負うのは小さく軽そうなザックです。
それを見て、自分の背中にあるテントの入った十キロ以上の荷物がなかったらどんなに楽かと思えてきました。いやせめて日帰り装備ならそれでも十キロ近く軽くなります。
ふと自分の体についた脂肪を考え、これを十キロ落とせば同じことではないかと思えてきました。仮に体重を十キロ落とせば、ザックの大部分の重量がなくなることと等しく、空荷に近い状態になるのではないかと。
その後立ち上がり、ふたたび登りはじめて現に苦しみを味わえば、やはり痩せるべきだと決意するのは必然です。

その段階で体重が80キロあったのを70キロに落とすことにしました。ひと月に3キロずつ、およそ3ヶ月で10キロ近く痩せることにします。
ダイエットの方法は簡単です。間食をなくし、3食は腹八分目にするだけです。
今まで夕食後に食べることが習慣化していたポテトチップスやチョコレートといったおやつをやめます。買い置きもしません。
おやつを買うための手間暇、時間、費用が省けますし、おやつを食べれば飲み物も欲しくなりますから、それも要りません。雑誌を見たりパソコンを使いながら食べていたこともありますが、雑誌やパソコンが汚れることを気にしながら作業をするというような煩わしさはありません。手も洗う必要はありません。食べかすを掃除する手間もかからなければ、包装のゴミもでません。おやつを食べることに費やしていた無駄な時間は他のことへと振り向けることができるようになります。
今まで余計なことをしていたのを、やめることにしただけです。

その結果、体重はほぼ計画通り減少し、最終的に60キロ代後半に下がりました。
もちろん、山登りは目に見えて楽になります。
北岳の草すべりは苦しむ人を横目にテント装備でもグイグイ登っていき、谷川岳馬蹄形縦走のアップダウンでは登りが来るたびに前を歩く人に追いついてしまいます。
自分がダイエットをして楽になったとたん他の人を見る眼も変わってきます。太った人が苦しそうに登っていると、損で哀れなように思えてきます。
太った人はそうでない人に比べ、明らかに疲労度が違います。普通の人がなんでもないところを、太っている人は極端に苦しんでいます。
登山をされていて太っている方は、登山をすることで筋力をつけて楽になることを目指すよりも、体重を減らすことが先決です。

体力に余裕がないというのは、遭難を引き起こす危険性すらあると思います。
下山中に道を間違えたとすれば、分かるところまで引き返すのが道迷いの鉄則です。
ところが体力に余裕がないと、また上に登り返すことには激しく抵抗します。これは太った方だけでなく年齢の高い体力の衰えた方にも同じことが言えます。
体がつらいと言っているのに、心を制して、歯を食いしばり登り返せる方は必ずしも多くないでしょう。
登って正しい道を行き直せばはるかに楽なのに、下に行けばいずれ里に出ると期待して深みにはまり、最後は崖から転落するのがパターンです。

登山は消費カロリーの多い行為と言われています。体重や荷物の重さ、年齢等によって変わってきますが、6時間程度の登山をすれば3000kcalという大きな計算結果が出てきたりします。それだけに脂肪が少しでも減ることを期待し、登山行為そのものをダイエットと考えることがあるかもしれません。
私は登山という行為がダイエットに効果的であるとは思えません。
登山は一度に高いエネルギーを消費するので、山に行った日の夕食や2~3日間は食欲が増します。太っている人はもともと食べることが好きな人ですから、強い食欲を我慢できるとは思えません。そればかりか登山でカロリーを消費したことを言い訳にして、高カロリーな食事をとるに決まっています。山から下りてきて食べるラーメンは無茶苦茶うまいのです。
それでは体重が減るわけがありません。

ダイエットは人生の中の一時的なイベントではありません。生涯に渡ってやり続けることです。そういう意味では、太っているのを痩せるだけではなく痩せ過ぎにも注意しなければなりません。ダイエットというよりは体重コントロールと言った方が適切です。

体重は摂取カロリーと消費カロリーがバランスするところで吊り合います。消費カロリーに見合った分だけカロリーを摂取すれば良いのです。特別に消費カロリーを増やしたり、摂取カロリーを減らす必要はありません。本来その人にとって適切な量の食事を摂っていれば自然とそれに見合った体重に落ち着いていきます。
人はダイエット食品やサプリメント、偏った食品摂取、運動等、何かプラスアルファのことをしてダイエットしようとします。それらの努力を生涯に渡って続けることは困難です。一時的に体重を減少させたとしても、それをやめたときに、その時点での生活習慣に応じた体重に戻っていきます。多くの人はダイエットというのを特別視していて、対策のために何かしようとしますが、やることを何か増やすのではなく、今やっている余計なことを減らせば良いのです。一方で食べて、それを別の方法で消し去ろうというのは無意味なことで、はじめから食べなければ、はなっから消す必要はありません。
そしてこれは登山でダイエットをしようとする行為にも通じることです。

ダイエットをするには何かに取り組む必要はなく、普段から適切な量の食事を摂取していれば良いということになります。
適切な体重にできれば、登山の登りは苦しいものではなく、余裕のある登りに変わり、山登りがもっと楽しくなるはずです。



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