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Garmin(ガーミン)社の「eTrex VISTA HCx」というGPSを使っています。日本語版と英語版があるのですが、安い英語版の方を使っています。これに2GBのmiroSDカードを追加して値段は\35,800でした。さらに等高線入りの地図をインストールするためにアップアップダウン製作所の「GARMIN(ガーミン) GPS用 日本詳細1:25000道路地図+トポ(20m等高線付き)」を\9,450で購入し、純正のキャリングケース\2,300も購入しました。これで\47,550かかる計算です。この他、単三型の乾電池が必要になります。何度も山に行くため、繰り返し使えるニッケル水素電池と充電器を購入しました。合計するとだいたい5万円くらいかかるということになります。私には結構な値段に思えます。
GPSなどなくても地図とコンパスを持ち、適切に活用すれば、現在地の把握や道迷いをかなり防ぐことができます。GPSがあれば地図やコンパスが不要だとは思いません。地図とコンパスを持った上でGPSを持つものだと思います。特にGPSの小さなディスプレイでは部分的にしか地図を表示できないため、紙の地図のように全体を俯瞰的に見ることはできません。それに読図にはそれ自体におもしろさがあります。
eTrexには私が使っているVistaの他にLegendやVentureというのもあるのですが、そちらは価格が安い分、気圧高度計や電子コンパスがありません。立ち止まって手に持ったGPSを回して地図の表示とともに方向を確認できることから電子コンパスはあった方が便利な気がします。高度計は重要ではありません。
■GPSの精度
私が使っているGPSは緯度経度を「N35°00.000′」「E135°00.000′」までの桁で表示しています。一番下の桁は1~2メートル程度の精度を表します。GPS衛星の電波が十分受信できる理想的な場所でGPSを手に持って歩いてみると、東に2、3歩移動すると経度の一番下の数字が1つ増え、西へ戻ると数字が減ります。南北方向に歩くと緯度の数字が増減します。
山中の谷のような場所では、GPS衛星からの受信状況が悪くなるので精度はもっと落ちますが、登山において1歩、2歩といった正確さが求められることはありませんから、必要十分だと思います。
気圧高度計についても、手に持ったGPSを頭上に上げたり、足元に下げたりすれば、数値が増減します。もともとキャリブレーションが必要で、時間の経過や場所によって変化する気圧に対する測定ですから、細かな精度は意味がないと思いますし、精度としては十分だと思います。
■バッテリーの持ち
eTrexは単三型の電池を2つ使います。充電式の電池にも対応しています。両者は電圧が違いますが、設定を変えれば電池残量もそれに合わせて表示されます。
電源を入れた直後はGPS衛星の捕捉に時間がかかることがあるのと、見たい時にすぐ見れるように、丸一日、電源を入れっぱなしにして使います。容量が2000mAhのニッケル水素電池を使っていますが、2日使うと交換になります。
登山中はずっと電源を入れたまま放っておけばよいのですが、それだけに電源を意識しません。夜、寝るときに切り忘れると、さすがに2日目はもたなくなります。
■道迷いを防止
よく道に迷ったら地図やコンパスを活用するというような話がありますが、実際は道に迷わないためにそれらを活用します。GPSも同じことで、道に迷わないということに対して強力なサポートになります。地図やコンパスあるいは読図で場所を推定するのではなく、ピンポイントで位置を特定してくれますから、理屈から考えて迷いようがありません。
現実には地図上での位置が判明しても、地図に記載された登山道が正確とは限りませんし、分岐に来たときGPSが具体的な方向を指し示してくれるものでもありません。もともと人間が何かを勘違いしていることもあります。GPSを持っていても絶対ということはないので油断は禁物です。
■進捗を知ることができる
一番、GPSが活きるのは、全体の行程のどこまで来ているかを知れることです。山頂や小屋まで行く途中で、全体の半分まで来たとか、後、300メートルぐらいで着きそうだとかといったことを、いつでも知ることができます。
紙の地形図を読図して、等高線が詰まっているからこの先、急な登りがあるということを前もって知っていれば、心持ちができる分、少し楽になるような気がします。それと同じように、GPSであと、どのくらい歩けば目的地に着くのか分かっていれば、気持ちが違ってくるのです。
場合によっては、休憩や撤退、計画変更の重要な検討資料になります。
■紙の地図は必要
GPSを購入して始めから入っている地図は簡素なもので、使い物になりません。山で使うには別途地図データが必要です。Garmin社製GPSの英語版で使える地図としてアップアップダウン製作所の「GARMIN(ガーミン) GPS用 日本詳細1:25000道路地図+トポ(20m等高線付き)」があります。内容が古い(と言っていたらバージョン3が出るようです)ですが、これでもあるとないとでは違います。
この地図は数値地図50mメッシュから作成したもので、GPSの処理性能を考えてデータが間引かれており、等高線等が甘くなっています。目安にはなりますが、読図には別途、紙の地形図が必要です。その紙の地形図上でGPSに示された位置がどこかを探すために、GPSで地図が表示されていて欲しいのです。それがないと緯度経度から地図上での場所を探さなければなりません。
ちょっと見て現在地を知る分には地図の粗さは問題になりません。
■ウェイポイント・ルートは使わない
好きな位置にウェイポイントと呼ばれる地点を登録することができます。名前とアイコンを選んで地図上にマークを置く機能です。山行計画段階で、ルート上の経由する地点等を入力しておけば、登山中にGPSの画面上でウェイポイントの方向や距離を確認することができます。しかし、そうした地点情報は地図に記入しておく方が、ずっと役に立ちます。あらかじめGPSに入力する手間も考えると効果的な使い方とは思えません。
ウェイポイントを結ぶルートを作成でき、そのルートをナビゲーションする機能があります。
ルートはウェイポイントを直線でつなぐのですが、登山道というのは複雑に蛇行します。最終的には次のウェイポイントに向かうにしても、登山道は一時的にまったく正反対の方向を進むことすらあります。直線で次の方向を示すナビゲーションと進むべき登山道の方向はほとんどの状況で一致しません。また、ウェイポイントの近くを通過しないと、そのウェイポイントを通過済みと判定してくれず、次のウェイポイントへのナビゲーションを開始しません。ウェイポイント通過の判定範囲も広くないので、わざわざ、きっちりとウェイポイントのところまで歩いていくか、GPSを操作して通過済みにしなければなりません。
こうした機能は、始めは試しに使ってみても、事前準備に手間がかかったり、ほとんど効果がないため、結局使わなくなると思います。
■トラックログ
歩いた軌跡を記録する機能があります。ずっと、歩いてきたルートが地図上に線で示されます。
登山口から山頂を往復するピストン型の登山では、帰路でどこから登ってきたのか分からなくなっても、GPSを見ればすぐにルートが判明します。
トラックログが常にGPS画面上に表示されていることで、歩いてきた行程がひと目で分かります。
地図に示される登山道が間違っていることがあればそれもはっきり分かります。
トラックログを記録できる長さに制限はありますが、その容量は十分で事実上問題になりません。いっぱいになったら古い方から消えていき、消す操作も不要で、何もせず放っておけばよいのです。
このトラックログをパソコンに取り込んで何かの役に立てようと思われるかもしれません。歩いた軌跡をパソコンの地図の上に表示するようなことです。デジカメで撮影した写真のExif情報から日時を取り出し、ログの日付と対応させるようなことも考えられます。
しかし、山から戻ってきてから、そうしたことをするのは少し手間がかかり、その割に得られるものは少ないと思います。結局、そうしたお遊びは始めのころだけで、そのうち面倒になるかもしれません。
■その他の付加機能
・高度計を兼ねる
eTrexのVistaは気圧高度計を内蔵しているため、別途、高度計を持つ必要がなくなります。また、地図から現在地の高度を見て補正する方法だけでなく、GPSから測定した高度でも補正できるので、高度の分からない場所でも補正できます。GPSによる高度の測定は精度が良くないそうですが、実用上は問題ありません。ただし、バッテリー切れになれば高度計を使えなくなる危険性はあります。
・方向が分かる
電子コンパスを内蔵しているため、東西南北の方向を知ることはできます。
ベースの付いたコンパスのような使い方は難しいと思います。レスポンスも良くありません。あくまで方向が分かる程度のものです。
・超正確な時計
GPSは人工衛星に搭載された原子時計の時刻を知らせる電波を受信することで、位置を計算しています。ですから極めて正確な時刻を表示します。GPSから時刻を取得しているので、手動で時計合わせをすることはありませんし、狂うこともありません。
■欠点
南アルプスの鳳凰三山にある中道という登山道を下山していたところ、尾根筋なのに、GPSの地図上に表示されているログが尾根を下りて横の川を横切りはじめました。地図が間違っているのか、地図の精度の問題かもしれないと思ったのと、GPSが一時的に狂っているのであれば、そのうち直るだろうと思っていましたので、とりあえず放っておきました。しばらく下山を続け再度GPSを見てみると、現在地が川を越えたとなりの尾根の上に移動しています。
これが事実だとしたらどこかで間違ってとなりの尾根に入り込んだことになりますので、そのときになって慌てて確認しました。GPSを信頼していましたから、少々焦りましたが、GPSの電源をオフにして入れ直すと、正しい尾根の位置を示しました。
これは登山において使い物にならないほど致命的に狂っていたことになります。こんなことは滅多にないと思いますが、GPSに頼りきらず、地図を見て人間が常に監視しておくことが必要だと思いました。
防水性がかなり厳重に作られています。GPSのボタン類はゴムで覆われていて押しにくいぐらいになっています。本体は樹脂製なのですが、その合わせ目である本体側面はぐるっと一周ゴムで覆われていて、電池カバーはネジのようなものを回してロックするという念の入れようです。
サイズは今時の携帯電話と比較すれば分厚く、デザイン的には野暮ったいくらいです。
こうしたところを見ているとアウトドアを想定した堅牢な作りが感じられます。
しかし、やはり機械ですから、過信は禁物だと思います。
重量的にはGPS自体は軽いです。単三型電池2本とその予備の分の重さが大きいです。
ザックにGPSを付けていて、そのザックをデポしたり、どこかに置いておくと、GPSが盗難に遭う危険性があります。結構高価なものですし、そうしたことに気を使わなければならなくなるというのが煩わしいです。自分で紛失したのに、誰かが泥棒したことを疑ってしまうかもしれません。
万一なくなると、精神的なダメージが大きいですし、それを防止するために、GPSのストラップを必ずザックに固定したり、首から下げるようにしています。心配の種が増えます。
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